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イビツウタ

二次創作リハビリ帳。更新不定期。

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産まれて生きていくにあたって罪を犯さない生物などいない。
みんな何かの犠牲の上に生きている。何かの命を奪って僕たちは今日も生きて行く。
血も肉もこの体を作り出すものは今も塗り替えられて。


「大きさはそれぞれにせよ、僕らは罪を犯して生きているんだ。それを罪と認識しているかは別として」


罰の紋章が罪負う者に罰を与えるというのなら、休みはないだろう。
チハヤは黒い左手を天に翳して言った。


「僕は裁く。それはこの紋章を宿した者の使命ともいえるから。狂わない、狂ってなどやらない。引き継いだ。紋章が今まで奪って、見てきたもの。想いとか、そういったものをすべて」


背負って僕は生きて行く。終わりの日まで。

古き海の英雄は、あの頃と同じ赤いバンダナを風にはためかせながら言った。
それを聴いていた少女、チハヤよりももっと長き時間を過ごしてきた人でなしの蒼き月の紋章を追い続ける吸血鬼は口を開く。



「本当におんしは面白い」
「貴方にはかなわない」
「いや、おんしは強い。その生き方ができる。だから紋章が、おんしを認めたのだろう」
「………」



シエラは不在である紋章が本来収まるべき自分の手の甲を見る。
こうしている間にも、恩恵を失った同胞たちは蝕まれていくのだ。
なんて無力。



「…というか。不器用だよね、僕らは」
「それにはわらわも含まれているのか?」
「じゃあ訂正。僕は不器用」
「複数形でかまわぬよ」



本当に、厄介な星の巡りのもとに生まれたものだ。
運命というものがあるのならば抗議してやりたいとチハヤは弱音を吐き、シエラは同意する。



「それでも」
「進むのだろう?」
「あなたもでしょう?」



お互い不器用で不格好な生き方しか出来ないのだと、知っていた。
知っているからこそ、傷を確かめ合う。
痛みを共有するためじゃない。不幸を嘆くためでも、絶望に暮れるためでもなく。
ただ、明日に進むために。







不器用な僕達は
(060913 4主とシエラ)
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